「就労」から始まるインクルーシブな世界.mp4

「就労」から始まるインクルーシブな世界.mp4

誰もが、突然死しない限りは、人生のどこかで障害者になる。

そして、障害とともに生き、障害とともに死んでいく。

 

そんな僕らがいま熱心に取り組んでいるのは、障害者になるのを予防すること、そして障害者になった人たちの身体機能を回復させること。

もちろん元気でいられる時間をできるだけ長くするのはとても大切なこと。

 

しかし、加齢に伴う心身の機能低下は生物としての宿命。

老化そのものが予防できるわけではない。

もちろん回復可能な機能障害であれば、最大限の回復を願うのは当然のこと。

 

しかし、機能障害の中には回復不可能なものもある。

回復不可能な時に「あきらめる」以外の選択肢がない。

本当に大切なのは、身体の機能に障害があったとしても、居場所がある、役割がある、そして生きがいを感じられる。

そんな世の中を目指すことではないのか。

 

そのためには、それぞれの強みを生かしながら、「就労」を通じて社会の中で活躍できる、そんなことを当たり前の選択肢にする必要があるのではないか。

2015年、若くして交通事故により脊椎損傷となった金子さんは、絶望のどん底に突き落とされる。

これ以上の機能回復はできない、家族をどう養っていけばいいのか。

 

教えてくれる人も、情報もどこにもない。

会社は解雇され、外出しようにも混雑時はバスにさえ乗せてもらえない。

ユニバーサルマナーの浸透やインクルーシブな社会には程遠い現実を痛感する。

 

でも、金子さんは諦めなかった。

料理の腕を武器に自分で店を立ち上げる。

車いすに対応した厨房、室内空間にもゆとりがあり、トイレも広く障害のある方もスムースに使える。

働く人も、食べる人も、障害のある人もない人も、誰もが快適に過ごる。

そして何より金子さんの作る料理はとても美味しい。

彼は、料理を通じて、多くの人を笑顔にしてきた。

 

しかし、金子さんのようなケースは非常にまれだ。

多くの場合、外出すら困難な状況に、多くの人は社会復帰、復学や復職を諦めてしまう。

金子さんのように手に職があれば何とかなるのかもしれない。

 

しかし、障害者という理由だけで金融機関の融資は厳しく、お店の開設資金の調達にはとても苦労されたという。

社会復帰を諦めているのではない。

社会が諦めさせているのだ。

そして、生存を維持するためのお金や医療だけが給付されていく。

 

日本の障害者は940万人。

東京23区の人口に匹敵する。

そして、その数は年々増え続けている。

はたして今のままでいいのか。

超高齢化の進行する日本。

すべての「健常者」は、いずれ「障害者」になる。

その時、「健常者」に最適化した社会は、いずれすべての人を不幸にしてしまう。

私たちの全員にとって最適な社会とは何なのか。

それぞれの強みを生かして活躍できる社会。

自分自身に自信と自己肯定感を持てる社会。

人と会う、外に出ることを遠慮しなくてよい社会。

安心して暮らし続けられる社会。

自分の人生を自分で選択できる社会。

障害者のため、ではなく、いずれ障害者となる自分たち自身のためにも、一度、正面からじっくりと向き合ってみたい。

 

【講師紹介】

★吉田篤史(よしだ あつし)さん

★ 【所属】 葛城病院 リハビリテーション部 作業療法課 吉田篤史

 

★金子 淳一郎(かねこ じゅんいちろう)さん

★ 【略歴】  和食調理人として寿司、和食、割烹、寿司、介護食、グループホーム施設などで幅広い経験を持つ。

高級食材使用の和食から高齢者に優しい食事まで多様な人へ最適な調理が可能。  

2015年に交通事故で脊髄を損傷し車椅子ユーザーとなり、絶望のどん底に落とされる。

リハビリ訓練後に生活や社会復帰(就職活動)の困難を経験し、ユニバーサルマナーの浸透やインクルーシブな社会には程遠い現実を痛感。  

2018年11月に「和食ダイニングわっ嘉」を開店し、高齢者、障害者、健常者が混ぜこぜになって利用できる心もバリアフリーになれる和食店を4年4ヶ月に渡って運営。

現在は調理師としての活動を続けながらも、講演、ピアサポート​(中途障害者、車椅子ユーザー対象)、各種イベント参画など共生社会実現のための活動も行って​いる。

以下、Youtube 車いすの料理人が作る超人気絶品料理【Jの追跡】(2022年10月3日)

 

【ファシリテーター】

◆佐々木淳(ささき じゅん)

◆ NPO法人Life is Beautiful理事 医療法人社団悠翔会理事長・診療部長。

日本内科学会認定医。内閣府規制改革推進会議専門委員(医療・介護・感染症対策)。

首都圏を中心に大都市部~離島・過疎地まで全国の21診療拠点から400人の仲間と7000人の在宅患者さんに24 時間の在宅総合診療+家庭医療を提供中。

すべての人の想いに応えるために。

2006年、わたしたちは東京都心・千代田区に最初の在宅医療クリニックを開設しました。在宅総合診療、確実な24時間対応、そして患者さんの人生観を大切にする医療。

地域の方々にこの3つの価値を約束し、それを忠実に守ってきました。

現在、志を同じくする65名の医師たちが、18の診療拠点から、常時5200名の患者さんの生活を24 時間体制でサポートしています。

精神科や皮膚科など専門医による訪問診療、そして訪問リハビリ、訪問歯科診療、訪問栄養指導なども順次スタートし、在宅でのあらゆる医療ニーズに応えるべく「チーム力」を磨いてきました。

わたしたちを動かすもの。

それはよりよい未来への強い願いです。

 

【対象】

介護・医療・その他 健康に関心のあるすべての方

 

【主催】

NPO法人Life is Beautiful

 

【後援】

京都府

 

【運営】

合同会社RuDoLf(ルドルフ)鈴木秀樹

登壇者:
佐々木 淳
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