幸せに生きるとはどういうことか!?  〜医療ケア職のウェルビーイングを考える〜

幸せに生きるとはどういうことか!? 〜医療ケア職のウェルビーイングを考える〜

Lifeが「幸せ・豊か」になること。

NPO法人Life is Beautifulの理念です。

 

それでは、幸せとはなんでしょうか?

WHOでは、健康を「ウェルビーイング」としています。

直訳すると「よい状態」です。

 

医療ケア介護の従事者は、目の前の人たちの幸せを常に考え、その人にとっての「よい状態」を作り出そうとします。

犠牲なき献身こそ真の奉仕とナイチンゲールは言っています。

自分たちの「幸せ」を考えることは、とても大切であると思います。

 

前野先生には、そのあたりを話していただけると思います。

以下、前野隆司/人はどうすれば幸せになれるのか 幸福学を活用したまちづくりの姿とは|アドバイザー活動紹介|Sustainable Smart City Partner Program (digital-is-green.jp)からです。

 

人間は、どうすれば幸せになれるのか。

それは有史以来、人類を悩ませてきた普遍的な問いであった。

なかでも「お金や地位は人を幸せにするのか」という命題は、宗教や哲学、文学における不動のテーマであったといえるだろう。

この点について、興味深い研究成果を発表したのが、2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン(米国)である。人間が感じる幸福の感情は、あるレベルまでは収入に比例して増えていく。

だが、収入が一定水準を超えると、幸福度は上昇しなくなる。

つまり、年収がある水準を超えると、「収入と幸福感とは相関しない」という事実が、研究によって明らかになったのである。

にもかかわらず、人間は「お金があればあるほど幸せになれる」という幻想に踊らされ、「もっとお金が欲しい」と欲望を肥大させてしまいがちだ。

それは、「経済成長や文明の進歩・発展こそが善」という現代社会の価値観によるところが大きい、と前野氏は指摘する。

それでは、人間を本当に幸せにするものとは何なのか。

人間の欲求を満たす「財」には、周囲との比較で価値が決まる「地位財」(収入や物、社会的地位など)と、

他人との比較を前提としない「非地位財」(自由や愛情、感謝、社会への帰属意識など)の2つがある。

そして、「地位財」による幸せは長続きしないが、「非地位財」による幸せは長続きする傾向があるという。

「例えば、人間はお金や地位を手に入れても、すぐに慣れてしまい、『もっと欲しい』と思うようになります。

地位財による幸せは欲望充足型の幸せなので、限界効用逓減の法則(保有量の増加に伴ってその効用が低下していくという法則)が働いて、幸福感が長続きしないのです。

 

一方、愛情や感謝で満たされた人が、その状態に慣れてしまって、何も感じなくなるということはありません。

こちらは限界効用逓減の法則が働かないので、長続きするわけです」 4つの因子を満たせば、人は誰でも幸せになれる 人間は、どのようなときに幸せを感じるのか。

それを明らかにするために、前野氏の研究グループはアンケート調査を行い、コンピュータによる因子分析を実施。

その結果、幸福感と深い相関関係がある、4つの因子の存在が浮かび上がった。

 

1つ目が、「やってみよう」因子(自己実現と成長の因子)だ。

夢や目標ややりがいを持って、「本当になりたい自分」をめざして成長していくとき、人間は幸せを感じるという。

「ただし、“やらされ感”の強い目標ではなく、ワクワクする目標でなければ幸せにはなれません。

企業の場合は、『社員一人ひとりが会社の理念と一致した目標を持ち、それを自分事と捉えて、やりがいを感じて働いている』というのが理想です。

会社の部品となって働くのではなく、人類の一員として、本当にやりたいこと、やるべきだと思えることをして生きていく。

コロナ禍での自宅待機中に、『自分が本当にやりたいことって何だろう』と、あらためて考えた人は多いと思います。

どうしたらもっとワクワクしながら、自分の仕事に取り組めるのか。

この機会に、ぜひ考えていただきたいと思います」

 

2つ目は、「ありがとう」因子(つながりと感謝の因子)である。

多様な人とつながりを持ち、人を喜ばせたり、人に親切にしたり、感謝したりすることが幸せをもたらす、と前野氏は言う。

「要は、『人を幸せにしようとすれば、自分も幸せになる』わけで、身近な人から世界中の人々に至るまで、感謝が広くて深い人ほど幸せを感じやすい。

たとえ苦手な人がいても、先入観を取り払えば、相手のいいところや素敵なところが見えてくる。

まずはそれを見つけ出して感謝すること。

それが幸せになる第一歩です」

 

3つ目は、「なんとかなる」因子(前向きと楽観の因子)である。

いつも前向きで、「自分のいいところも悪いところも受け入れる」という自己受容ができており、「どんなことがあっても何とかなるだろう」と感じる楽観的な人は、幸せになりやすいという。

 

そして最後の4つ目は、「ありのままに」因子(独立と自分らしさの因子)。

人目を気にせず、自分らしく生きていける人は、そうでない人と比べて幸福感を覚えやすい傾向がある。

「他人と自分を比べすぎず、自分軸をしっかり持って生きる人は幸せです。

逆に、自分軸がぐらついていると、人と比べて『自分はダメだ』と思い込み、幸福度が低くなりがちです」と前野氏は言う。

人目を気にしない人は、他人との比較によらない非地位財を大切にする傾向があるため、長続きする幸せを手に入れやすいのだという。

 

【講師紹介】

★前野隆司(まえの たかし)さん

★ 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授兼慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長。

イノベーション教育、社会システムデザイン、幸福学、システムデザイン・マネジメント学などの研究に従事

 

【研究テーマ】

ウェルビーイングのための製品 ・ サービスのイノベーティブデザインから、ウェルビーイングな働き方のデザイン、

ウェルビーイングな地域づくり ・ コミュニティーづくりのデザイン、 ウェルビーイング教育のデザインなど、様々なウェルビーイング研究を行なっています。

 

詳しくは、ヒューマンラボのHPをご覧ください。

所属ラボ・センター ヒューマンシステムデザインラボ(ヒューマンラボ) イノベーティブデザインセンター ソーシャルデザインセンター ウェルビーイングリサーチラボ

 

【略歴】

1980(昭和55)年4月 東京工業大学第4類入学

1984(昭和59)年3月 東京工業大学工学部機械工学科卒業

1986(昭和61)年3月 東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了

1986(昭和61)年4月 キヤノン株式会社入社 生産技術研究所勤務

1990(平成2)年7月 カリフォルニア大学バークレー校機械工学科 Visiting Industrial Fellow(~1992(平成4)年6月)

1993(平成5)年12月 博士(工学)学位取得(東京工業大学)

1995(平成7)年4月 慶應義塾大学理工学部機械工学科専任講師

1999(平成11)年4月 慶應義塾大学理工学部機械工学科助教授

2001(平成13)年4月 ハーバード大学応用科学・工学部門 Visiting Professor(~2001(平成13)年9月)

2006(平成18)年4月 慶應義塾大学理工学部機械工学科教授

2008(平成20)年4月 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授

2008(平成20)年6月 慶應義塾大学環境共生・安全システムデザイン教育研究センター長兼任(~2013(平成25)年3月)

2011(平成23)年4月 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長およびシステムデザイン・マネジメント研究科付属システムデザイン・マネジメント研究所長兼任(~2019(令和元)年9月

2017(平成29)年8月 慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任

 

【ファシリテーター】

◆山下 和典(やました かずのり)

◆ NPO法人Life is Beautiful理事長

 

【対象】

介護・医療・その他 健康に関心のあるすべての方

 

【主催】

NPO法人Life is Beautiful

 

【後援】

京都府

 

【運営】

合同会社RuDoLf(ルドルフ)鈴木秀樹

登壇者:
前野 隆司
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